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「ここぞの時」に服用を 睡眠薬

[2022.10.08]

日本人の5人に1人は、不眠症に悩んでいるといわれている。「新生活のスタートや定年退職後など、がらっと生活習慣が変わった人がよく相談に訪れます」と金大付属病院神経科精神科の内藤暢茂講師は話す。

「本来、重要な会議やイベントが翌日に控えている時など、体を休めておきたいここぞという時に飲むのが、睡眠薬の適切な使い方です」と、内藤医師は強調する。しかし、患者の中には「これがないと眠れない」と習慣化してしまっている人もいるという。

睡眠薬の種類はさまざまで、いずれも脳内に働き掛けることで眠りを引き出す。このうち依存性が出やすいのは、睡眠薬や抗不安薬に用いられる「ベンゾジアゼピン系薬」だ。この薬はアミノ酸の一種である「GABA―A」の受容体に作用し、眠気をもたらす効果がある。

アルコールと似た作用

睡眠薬は即効性があり、体内から抜けるのも早いが、作用の仕組みがアルコールに似ている。アルコールも、摂取するとGABA―A受容体に影響を及ぼすことで知られる。確かに、飲酒後はすぐ気分が大きくなり、しばらくすると眠たくなる。飲み過ぎれば依存症になる点まで共通している。

ベンゾジアゼピン系薬は服用しなくなった際に起こる手の震えや動悸などの離脱症状や、効かなくなって量が増える耐性もあり、いったん依存するとやめるのが難しい。

「毎日服用してしまう人には『土日は飲まない』『1日おきに飲む』といった具合に頻度を減らすよう指導します」と内藤医師は説明する。最近では、不眠症の治療にベンゾジアゼピン系薬の処方をなるべく避け、依存性の少ない薬を処方する傾向にある。

酒と同時摂取は厳禁

最後に、睡眠薬を服用する上で、絶対に注意してほしいのが飲酒だ。酒と睡眠薬を同時に摂取するのは、副作用が増強され、急性の意識障害である「せん妄」が起きてしまうので厳禁である。

正しく服用すれば心強い味方となる睡眠薬だが、頼りきりにならないよう、日々の生活習慣や睡眠への意識も合わせて見直したい。

 

睡眠12カ条 (厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、眠りとめざめのメリハリを。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

              北國新聞(2022.10. 2)より

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