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院内研修会だより

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日時 2024年 3月 23日(土) 

高齢者の健康法

―鍵は「食・動・楽」にあり―

 

高齢者の健康を支える鍵は、ごく身近な生活習慣のなかの「食・動・楽」にあります。

・・・高齢になると食欲が低下し、カロリーや栄養素(特に肉・魚・豆類などのタンパク質)の摂取が不十分になり、その結果、体力・筋力・意欲が低下し、感染症に対する抵抗力が低下します。朝食・昼食・夕食の“三”食をしっかり摂り、“減”塩食にし、野“菜”を十分に摂取する「三・減・菜」を心がけましょう。

・・・普段からきちんとした運動で体力を高めることが心血管疾患のリスクを低くします。また、座位時間を短くすることも大切です。30分の座位ごとに1分の軽い歩行をすることで、血圧も血糖値も、座位を続けているときより明らかに低下します。大切なことはこまめに体を動かすことです。

・・・残りの人生を明るく豊かにするために、楽しいことを優先して実行するようにします。避けられない嫌なことは面白がってすることにしましょう。そして、 物事を楽観的にとらえて、明るく振る舞います。そうすることで自律神経が安定し体調が良好に保たれます。

          令和5年9月20日 日医ニュース「健康ぷらざ」より

 

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日時 2023年 11月 25日(土)

うんちは健康のバロメーター

 

うんちの量・質・回数

 「うんち」は、食べたものが胃や腸で消化・吸収された後の「余りもの」です。消化の良いものを多く食べると量が減って硬くなり、消化しにくいものを多く食べると量が増えて緩くなります。たくさん食べると量が増え、食べるのを控えると量は減ります。食べる量が少なく、消化・吸収された後の「余りもの」が少なくなってうんちの量や回数が減っている時は、下剤などを使って無理に出す必要はありません。

快便には、快食・運動・我慢しない

 気持ちよくうんちを出すためには、「バランスの良い食事を適切な量で」摂りましょう。うんちが緩めの人には消化が良い食べもの、便秘気味の人には食物繊維が豊富で消化しにくい食べものが合っています。食べる量が減っている人は、水分の量も減ってうんちが硬くなるので、食事のほかに多めの水分を摂るようにしましょう。

 適切な運動はうんちを出しやすくします。適度な運動を継続しましょう。

 また、便意を我慢すると、うんちが硬くなって出しにくくなります。家でも、学校でも、職場でも、我慢しないでトイレに行きましょう。

うんちで腸の健康状態を知ろう

 腸の健康状態が悪くなると、うんちは緩くなったり、臭いがきつくなったり、食べた状態そのままで出てきたりします。そして、腸に病気ができると血が混じり、腸が狭くなるとうんちが出にくくなっておなかが痛くなり、緩いうんちが何回も出るようになります。うんちが急に緩くなってその状態が続く、うんちの色が変わる、血が混じる、おなかが痛むなどの症状があれば、腸に病気があるサインです。早めに医療機関を受診しましょう。

 腸の健康状態は健康診断でチェックできます。検便検査を毎年受けて、もし異常が疑われたら大腸内視鏡検査を受け、腸の状態を確認しましょう。

              令和5年11月20日 日医ニュース「健康ぷらざ」より

 

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日時 2023年 8月 26日(土)

腸内フローラを整えよう

腸内フローラって、何?

 腸内フローラは、腸内細菌叢とも言い、糞便のなかの細菌の集団のことです。糞便の60%が腸内細菌で構成されています。ひとりの腸内には約100種類、約40兆個の腸内細菌が棲んでいるとされていて、種類とその割合は人によって異なります。
 腸内細菌は、ビタミンやアミノ酸を産生し、免疫機能を高めたり、病気の原因となる細菌やウィルスを排除するなど、体に有用な働きをする「善玉菌」、腸内で有害な物質を作り出す「悪玉菌」、基本的には有用で、時として有害になる「日和見菌」の3種類に分けられます。このさまざまな腸内細菌は、生存競争を繰り広げながら、一定のバランスが保たれた状態になっています。

腸内細菌のバランスが崩れると

 遺伝子解析による腸内フローラの研究から、特定の腸内細菌が増加して、腸内細菌の多様性が減少し、健康な人と菌叢が異なってくると、病気になりやすいことがわかってきました。炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、非アルコール性脂肪性肝炎、大腸がんなどの消化器疾患だけでなく、糖尿病や肥満、動脈硬化、アレルギー、関節リウマチ、さらに自閉症、うつ病、認知症などにも関与していることが明らかにされています。

病気になりにくい腸内環境を作ろう

 望ましい腸内フローラは、善玉菌が優位でバランスが取れた状態です。腸内細菌の種類と割合は、食事の内容によって大きく変わるので、毎日の食事は大事です。善玉菌そのものと、善玉菌が好むオリゴ糖や食物繊維を摂取すると良いでしょう(表1)。悪玉菌は高脂肪・高たんぱくの食品を好みます。脂肪や肉類の食べ過ぎは悪玉菌を増やす原因となるので避けたいですが、体を作る重要な栄養なので、適量を摂取することは必要です。さまざまな食品を適量摂取して腸内細菌の多様性を維持し、病気になりにくい腸内環境を作るよう心がけましょう。適度な運動や十分な睡眠も、腸内環境にとって大切です。

表1 腸内フローラを改善する食品

摂取すると良いもの

多く含まれている食品

善玉菌

乳酸菌

チーズ、ヨーグルト、納豆、漬物など

ビフィズス菌

ヨーグルトなど

善玉菌を増やすもの

オリゴ糖

ごぼう、玉ねぎ、りんご、バナナ、はちみつなど

食物繊維

穀類(玄米、雑穀など)、豆類(大豆、いんげん豆など)、いも類(さつまいも、じゃがいもなど)、きのこ類(しいたけ、えのきなど)、海藻類(わかめ、昆布など)、野菜類(ごぼう、ブロッコリー、モロヘイヤ、かぼちゃなど)、切り干し大根など

令和5年8月20日 日医ニュース「健康ぷらざ」より

 

 

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日時 2022年10月 8日 (土)

 

「ここぞの時」に服用を睡眠薬

 

日本人の5人に1人は、不眠症に悩んでいるといわれている。「新生活のスタートや定年退職後など、がらっと生活習慣が変わった人がよく相談に訪れます」と金大付属病院神経科精神科の内藤暢茂講師は話す。

「本来、重要な会議やイベントが翌日に控えている時など、体を休めておきたいここぞという時に飲むのが、睡眠薬の適切な使い方です」と、内藤医師は強調する。しかし、患者の中には「これがないと眠れない」と習慣化してしまっている人もいるという。

 睡眠薬の種類はさまざまで、いずれも脳内に働き掛けることで眠りを引き出す。このうち依存性が出やすいのは、睡眠薬や抗不安薬に用いられる「ベンゾジアゼピン系薬」だ。この薬はアミノ酸の一種である「GABA―A」の受容体に作用し、眠気をもたらす効果がある。

アルコールと似た作用

 睡眠薬は即効性があり、体内から抜けるのも早いが、作用の仕組みがアルコールに似ている。アルコールも、摂取するとGABA―A受容体に影響を及ぼすことで知られる。確かに、飲酒後はすぐ気分が大きくなり、しばらくすると眠たくなる。飲み過ぎれば依存症になる点まで共通している。

 ベンゾジアゼピン系薬は服用しなくなった際に起こる手の震えや動悸などの離脱症状や、効かなくなって量が増える耐性もあり、いったん依存するとやめるのが難しい。

 「毎日服用してしまう人には『土日は飲まない』『1日おきに飲む』といった具合に頻度を減らすよう指導します」と内藤医師は説明する。最近では、不眠症の治療にベンゾジアゼピン系薬の処方をなるべく避け、依存性の少ない薬を処方する傾向にある。

酒と同時摂取は厳禁

 最後に、睡眠薬を服用する上で、絶対に注意してほしいのが飲酒だ。酒と睡眠薬を同時に摂取するのは、副作用が増強され、急性の意識障害である「せん妄」が起きてしまうので厳禁である。

 正しく服用すれば心強い味方となる睡眠薬だが、頼りきりにならないよう、日々の生活習慣や睡眠への意識も合わせて見直したい。

 

睡眠12カ条 (厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」)

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、眠りとめざめのメリハリを。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

              北國新聞(2022.10. 2)より

 

 

日時 2022年 8月 20日(土)

夏に潜む危険  食中毒

 今年の夏、千葉県内のプールで子どもたちが嘔吐などの体調不良を訴え、病院に搬送されたニュースが話題となった。原因は「おにぎり」の可能性があるとみられている。

 おにぎりを素手で握ると、手に付いている黄色ブドウ球菌などの食中毒の原因菌がご飯に付いてしまうことがある。保冷せずに保管すれば、さらにリスクが大きくなる。

 食べ物の変な臭いで食中毒を回避できれば苦労しないが「臭いで分かる時は食材が腐っている場合であり、食中毒の菌が付いているかどうかは判断できない」と金大付属病院感染制御部の高橋芳徳特任教授はくぎを刺す。

 食材が傷みやすい夏は食中毒に気を付けたい。バーベキューやキャンプなどで生肉を調理する機会が増えるが、その際に摂取する危険性があるのがカンピロバクターだ。

2日~1週間の潜伏

 腸内に入って増殖する過程が必要で、2日~1週間の潜伏期間がある。発熱や腹痛、下痢、胃腸炎などを発症し、数日で治る場合もあれば、1週間以上続くこともある。ひどい場合は食事を受け付けず、経口補水液での水分補給がやっとである。

 肉の生焼けには十分注意を払ってほしい。75度で1分間以上加熱することを目安に、中心部まで火を通しておこう。トングや箸も、肉を焼く時と焼いた肉を取り分ける時で使い分けるのが望ましい。

 食中毒を引き起こす大抵の細菌は、75度以上でしっかり加熱することで死滅する。ただ、中には熱に耐性のある細菌も存在する。それが「ウエルシュ菌」だ。

 ウエルシュ菌が繁殖する代表例が「一晩寝かせたカレー」である。カレーを調理して常温で放置した場合、ウエルシュ菌は熱に耐える「芽胞」をつくりながら増殖する。この芽胞は100度で1時間加熱しても耐えるため、温め直した程度では殺菌されない。

 防ぐには食材を丁寧に水洗いし、調理器具も消毒するのが第一となる。カレーだけでなく、煮物でも発生するので、できれば作り置きせずに食べきるのが無難だ。

冷蔵保存は小分けに

 どうしても食べきれない場合は食べない分を小分けにし、すぐに10度以下の冷蔵庫で保存しよう。小分けにするのが特に重要で鍋ごと冷蔵庫に入れて保存しても、ウエルシュ菌は増殖する。

 

      食中毒を防ぐためのポイント

         〇肉や魚は生で食べるものから離す
         〇加熱は十分に(75度以上で1分間以上が目安)
         〇おにぎりは素手でなく、ラップに包んで握る
         〇調理前は手を洗い、調理器具も洗って消毒する
         〇残った食品はすぐ小分けにして冷蔵庫に入れる
         〇食事の盛り付けには清潔な器具、食器を使う
         〇冷凍食品の解凍は冷蔵庫で行う
         〇少しでも怪しいと思った食材は捨てる

         ※厚生労働省のホームページなどから抜粋

              北國新聞(2022.8.20)より

 

日時 2022年 7月 2日(土)

熱中症急襲「異例の夏」

     高齢者と幼い子 特に注意

■ 慣れる前に猛暑
 「今年は異例です」。医療関係者でつくる「教えて!『かくれ脱水』委員会」委員長で、兵庫医科大特別招聘教授の服部益治さんは警鐘を鳴らす。
 服部さんによると、6月にもかかわらず記録的な暑さが訪れたため、体が暑さに慣れる「暑熱順化」が進んでいない人も多い。また、熱中症は脱水状態が進んで起きるが、症状が進行するまで脱水に気付かないこともあるという。
■ こまめに水分を
 特に高齢者は、若い人に比べて体の水分量が少なく、喉の渇きも自覚しにくい。規則正しい食事を心がけ、1時間ごとにコップ1杯の水分補給など、喉が渇いていなくても、こまめに水分を取るようにする。トイレに行く回数を減らしたい人もいるが、脱水症を防ぐことが最優先だ。
 高齢者は屋内でも熱中症にかかりやすい。袖や襟が広く、風通しのいい服を着る。加齢のために暑さに対する感覚が鈍くなる人もいる。必ず温度計を見て、室温を調整するといい。
■ 大人が見守る
 小さい子どもも脱水症を起こしやすい。新陳代謝が活発で水分を消費しやすい上、体温の調整機能が十分に発達していないからだ。
 「喉が渇いた」などと言えない乳幼児や、遊びに夢中になって水分補給を忘れている児童に対しては、ふらつきやだるさが見られないかなど周囲の大人が注意して見守ることが必要だ。
 もし脱水が疑われる場合はどうしたらいいのか。薬局などで販売されている経口補水液で早めに水分を補給することをすすめる。補水液には塩分と糖分が含まれていて、水分の吸収が速い。
■ エアコンを使う
 気象予報士の蓬莱大介さんによると、暑さはしばらく続きそうだ。「6月は異例の猛暑だった。7、8月も平年並みか高めで、9月も残暑が厳しいとみられる」と話す。
 蓬莱さんは「節電を心配してエアコンを使わない人もいるが、無理をせず適切につかってほしい」と話す。

  ◆熱中症予防のポイント

   ・エアコンの設定温度を柔軟に調整し、扇風機も活用する
   ・喉が渇いていなくてもこまめに水分補給する
   ・汗をかいた時は塩分の補給も
   ・屋外ではマスクをはずす
   ・外出時は日傘や帽子を着用し、少しでも体調が悪くなったら涼しい場所へ移動する
   ・熱中症警戒アラートが発表されている時は外出をなるべく控える
   *環境省や厚生労働省の資料などを基に作成

           読売新聞(2022.6.29)より

 

日時 2022年 5月21日(土)

 

熱中症 初夏も用心

 今年も気温が上昇し、汗ばむ日が増えてきた。専門家によると、熱中症は夏だけでなく、暑さになれていない初夏も危険性が高いという。コロナ渦で定着したマスクは夏場は不快に感じることがある。飲み物も利用して効果的な予防に努めてたい。

 熱中症に詳しい群馬大の鯉淵典之教授(環境生理学)によると、熱中症には大きく分けて熱疲労による脱水症と、熱けいれんが起こる脱塩症の2種類がある。脱水症は、体内に酸素が行き渡らなくなり、脱塩症は、筋肉や神経が動かなくなる。

 簡単な対策はこまめな水分と適度なミネラルの補給。通勤や通学のようなじわっと出る汗は、塩分が少ないため、水で十分。体を冷やす効果もあるので、冷水がよい。スポーツや炎天下の作業で発汗量が多くなる場合は、意識的にミネラル分をとることが肝心だという。

 鯉淵氏は「マスクをしただけでは熱中症にはならない」と説明する。ただ、顔を覆うので熱がこもって不快になるほか、はずすのが面倒なため、水分摂取を怠る場合もある。口の周りは温度感覚が鋭く、余計に暑さを感じやすい。着用時も首や顔を冷やすほか、こまめな水分補給も心がけよう。

読売新聞(2022.5.16)より

 

 

日時 2021年12月18日(土)

 

入浴中の事故

-ヒートショックと入浴熱中症-

 

入浴中の事故の実際

 高齢者の増加に伴って、入浴中の事故は増え続けています。2013年のデータですが、全国の入浴中の急死者数は年間約19,000人と推計されています。

 急激な温度変化により体がダメージを受けるヒートショックは、寒い脱衣所から急に熱い湯に入ったときに血圧が変動して心筋梗塞を起こすことがあるので、入浴事故の主な原因とされてきました。しかし高齢者の入浴事故を調査した結果では、ヒートショックは7%で、入浴熱中症が84%でした。

 

入浴熱中症に要注意

 体温37℃の人が全身浴をした場合、湯温が41℃では33分で、42℃では26分で体温が40℃に達するという研究報告があります。体温が40℃を超えると熱中症の症状が出始めて、意識障害が起き、42,5℃に達すると心室細動を起こして突然死する危険性が高まります。

 高齢者は熱さを感じにくく、長時間浴槽に浸かる傾向にあり、予兆なく意識障害に陥りやすいです。体格の小さな子どもや瘠せた人は、体が温まりやすいので注意が必要です。飲酒後に入浴すると眠り込んでしまったり、ダイエット目的の入浴では症状をがまんしてしまい、長風呂になりやすいので大変危険です。

 

入浴中の事故を防ぐには

 サウナ愛好家が、サウナ室と水風呂への入浴を繰り返す温冷交代浴によって得られる快感を「ととのう」と表現します。自律神経の働きを高める方法のひとつですが、ヒートショックと同じことです。高血圧や心臓に病気のある方には危険です。持病がなくても体調が良くないときには、サウナも入浴も控えましょう。

 体温を過度に上昇させない入浴の仕方などを工夫して(下表)、安全な入浴を心がけましょう。

 

表 入浴事故を防ぐ工夫

湯温を41℃以下にする。

浴槽につかる時間は10分以内にする。

浴室に時計を置く。

半身浴やシャワーを取り入れる。

入浴後の体温測定を習慣にする。

飲酒後に入浴しない。

入浴する際に同居者に一声かける。

 

 

令和3年12月5日 日医ニュース 「健康ぷらざ」より 

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