夏に潜む危険 食中毒
今年の夏、千葉県内のプールで子どもたちが嘔吐などの体調不良を訴え、病院に搬送されたニュースが話題となった。原因は「おにぎり」の可能性があるとみられている。
おにぎりを素手で握ると、手に付いている黄色ブドウ球菌などの食中毒の原因菌がご飯に付いてしまうことがある。保冷せずに保管すれば、さらにリスクが大きくなる。
食べ物の変な臭いで食中毒を回避できれば苦労しないが「臭いで分かる時は食材が腐っている場合であり、食中毒の菌が付いているかどうかは判断できない」と金大付属病院感染制御部の高橋芳徳特任教授はくぎを刺す。
食材が傷みやすい夏は食中毒に気を付けたい。バーベキューやキャンプなどで生肉を調理する機会が増えるが、その際に摂取する危険性があるのがカンピロバクターだ。
2日~1週間の潜伏
腸内に入って増殖する過程が必要で、2日~1週間の潜伏期間がある。発熱や腹痛、下痢、胃腸炎などを発症し、数日で治る場合もあれば、1週間以上続くこともある。ひどい場合は食事を受け付けず、経口補水液での水分補給がやっとである。
肉の生焼けには十分注意を払ってほしい。75度で1分間以上加熱することを目安に、中心部まで火を通しておこう。トングや箸も、肉を焼く時と焼いた肉を取り分ける時で使い分けるのが望ましい。
食中毒を引き起こす大抵の細菌は、75度以上でしっかり加熱することで死滅する。ただ、中には熱に耐性のある細菌も存在する。それが「ウエルシュ菌」だ。
ウエルシュ菌が繁殖する代表例が「一晩寝かせたカレー」である。カレーを調理して常温で放置した場合、ウエルシュ菌は熱に耐える「芽胞」をつくりながら増殖する。この芽胞は100度で1時間加熱しても耐えるため、温め直した程度では殺菌されない。
防ぐには食材を丁寧に水洗いし、調理器具も消毒するのが第一となる。カレーだけでなく、煮物でも発生するので、できれば作り置きせずに食べきるのが無難だ。
冷蔵保存は小分けに
どうしても食べきれない場合は食べない分を小分けにし、すぐに10度以下の冷蔵庫で保存しよう。小分けにするのが特に重要で鍋ごと冷蔵庫に入れて保存しても、ウエルシュ菌は増殖する。
食中毒を防ぐためのポイント
- 肉や魚は生で食べるものから離す
- 加熱は十分に(75度以上で1分間以上が目安)
- おにぎりは素手でなく、ラップに包んで握る
- 調理前は手を洗い、調理器具も洗って消毒する
- 残った食品はすぐ小分けにして冷蔵庫に入れる
- 食事の盛り付けには清潔な器具、食器を使う
- 冷凍食品の解凍は冷蔵庫で行う
- 少しでも怪しいと思った食材は捨てる
※厚生労働省のホームページなどから抜粋
北國新聞(2022.8.20)より