夏です!プールの季節です―咽頭結膜熱とアデノウィルス感染症―
プールで流行する病気なの?
夏季を迎えて、学校や保育所ではプールの季節となりました。この時期になると、しばしば流行を耳にする感染症があります。一般に「プール熱」とよばれる病気は、「咽頭結膜熱」というアデノウィルスによる感染症です。以前はしばしばプールで感染が拡大したのでこのような呼称が付いていますが、昨今は感染症対策としてプールの水質基準が管理され、タオルの共用なども行われなくなったので、プールでのアウトブレイクはほとんどありません。
流行に季節性はあるの?
子どもたちの感染症は季節性のあるものが多く、アデノウィルス感染症は初夏から夏に流行することが多い病気です。しかし近年は、迅速診断キットの普及もあり、夏だけでなく通年で発生していることがわかってきました。コロナ明けの2023~2024年には秋から冬にかけて、例年を遥かに超える大きな流行も観察されました。
病型と感染経路
「咽頭結膜熱」の主な症状は発熱、咽頭・扁桃炎、結膜炎です。アデノウィルスによって肺炎、嘔吐や下痢を来す急性胃腸炎、急性膀胱炎になることもあります。このようにアデノウィルスによる病態は多彩ですが、抗ウィルス薬はないので、対症療法を行います。呼吸器や眼の粘膜からはウィルスが排出され、「飛沫感染」や「接触感染」します。糞便中にもウィルスが存在し、「糞口感染」も起こります。手洗いや手指衛生などを日常から習慣付けることが、感染予防のためには大切です。
令和7年6月20日 日医ニュース「健康ぷらざ」より
